「スキルアップしよう!」という言葉を、会社や広告などで見聞きする機会が増えています。たしかにスキルアップすれば今後のキャリア形成に一役買いそうな印象があります。
ただ、スキルアップについて一つ言いたいことは、どんなスキルを身につければ良いかきちんと戦略を立てるべきだとということです。せっかく時間をかけてスキルを習得するのであれば、経済的メリットなど期待できなければもったいないためです。
筆者はこれまで戦略的にスキルを習得してきました。戦略的にスキルを獲得することで、自分自身の希少性を高め、価値をあげることができたと実感しています。
この記事では、戦略的にスキルアップする方法について解説していきます。
この記事を読むとわかること
・スキルアップするメリットがわかる
・戦略的なスキルアップの方法がわかる
・役立つスキルの見つけ方がわかる
この記事を書いた人
古川賢人 事業開発.com編集長/株式会社イフビズ代表取締役
事業家、起業家。ベンチャー企業創業および事業開発〜運用、大企業での事業開発〜運用まで経験。世界的経済誌Forbesにてアジアで活躍する30歳未満のリーダー人材(Forbes 30 Under 30 Asia 2021)として選出された他、グッドデザイン賞、日本ギフト大賞、ACC等受賞経験あり。事業開発人材=事業家の働きやすい環境作りや事業家育成が企業成長及び経済成長の鍵と考えている。
スキルアップとは?
スキルアップとは、個人が持つ技術や知識を向上させることを指します。仕事の質を高め、キャリアの幅を広げることが可能となります。
スキルを習得したり、熟練することで、これまでできなかった仕事ができるようになると理解してください。現代の急速な技術進化や市場の変化に対応するためには、常に新しい知識や技術を習得し続ける必要があります。
なぜスキルアップが必要なのか
さて、スキルアップがなぜ必要なのか説明していきます。
キャリアアップのため
キャリアアップを目指すためには、現在の仕事に必要なスキルを超える新たなスキルの習得が不可欠です。例えば、プロジェクトマネジメントのスキルやリーダーシップ能力を身につけることで、昇進のチャンスが増えます。
キャリアアップは、自分自身の専門性を高め、より高いポジションや給与を得るための重要なステップです。
リスキリングの追い風
リスキリングとは、既存の職務に必要なスキルセットを再学習することです。特に、デジタル技術の進化により、多くの企業が従業員に新しい技術を習得することを求めています。
これから少子高齢化が一段と進み、労働力が減少すると見込まれています。この背景から、国は一人一人の個人の能力向上をはかるためにリスキリングを推奨しています。
これから労働力が減る中で、ポジションを築いていくためにはスキルアップが欠かせないのです。
社会人の勉強時間は1日平均13分
2022年年、総務省統計局が実施した「社会生活基本調査」によると、社会人の勉強時間は1日平均13分でした。2016年の同調査では1日平均6分ということでしたので、倍増はしていますが、非常に短時間だということがわかります。
また、50%以上の社会人が1日0分に勉強時間となっているため、少しでも勉強すれば差をつけられるのです。
企業の成長のため
企業が競争力を維持するためには、従業員のスキル向上が不可欠です。高度なスキルを持つ従業員が増えることで、企業全体の生産性やイノベーションが向上し、持続的な成長が可能となります。
企業は、従業員のスキルアップを支援することで、優秀な人材を確保し、ビジネスの成長を促進することができます。
スキルアップのメリット
スキルアップすることのメリットについて解説します。スキルアップするほど、あなたの価値が上がります。
生産性が向上する
新しいスキルを習得することで、業務効率が向上し、生産性が上がります。
例えば、新しいツールやソフトウェアの使い方を学ぶことで、業務のスピードと精度が増します。ワークライフバランスの最適化を目指せますし、生産性の向上は、企業にとっても競争力を高める要因となります。
仕事の幅が増える
スキルアップにより、担当できる仕事の幅が広がります。これにより、さまざまな業務に対応できるようになり、職場での存在感が高まります。「仕事ができる人」として、一躍脚光を浴びることが可能です。
仕事の幅が広がることで、異なるプロジェクトやチームに参加する機会が増え、経験の幅も広がります。
「スキルアップでできる仕事が増える」→「仕事の幅が増える」→「スキルアップでできる仕事が増える」→…といった形で、キャリアアップ人材は、常に需要が高いのです。
モチベーションがアップする
新しいスキルを習得することは、自分自身の成長を実感する機会です。これがモチベーションの向上につながり、仕事に対する意欲が高まります。高いモチベーションは、仕事のパフォーマンスにも良い影響を与え、成果を上げる原動力となります。
人は成功体験を積むことで、仕事に対してポジティブな感情を抱くようになります。成功することで、まわりから賞賛され、キャリアに箔がつくため、良いことづくしです。
キャリアの選択肢が増える
多様なスキルを持つことで、キャリアの選択肢が増えます。新しい分野や役割に挑戦する機会が増え、キャリアパスの幅が広がります。
例えば、新しい技術や知識を習得することで、異業種への転職や新しいプロジェクトへの参加が可能となります。
給料がアップする
これまで記載してきたメリットの結果として、給料がアップしやすくなります。
企業が欲しいのは、お金を作ることのできるスキルを持っている人です。企業にとって「こういう人が欲しかった!」という人材になれれば、給料アップが期待できます。
戦略的にスキルアップするためのステップ
さて、スキルアップを戦略的に実践するために、どのような観点を持つと良いのか考えていきましょう。大きく分けて3ステップです。
STEP1:現状を把握する
まずは自分の現在のスキルセットを客観的に評価することから始めましょう。これにより、どの分野でスキルアップが必要かが明確になります。
自己評価を行う際には、具体的な業務経験や成果を振り返り、自分の強みと弱みを整理することが重要です。
以下にスキルの一例を記載しますので、参考にしてください。
スキルカテゴリ | スキル名 | 具体例 |
---|---|---|
ハードスキル | 技術スキル | プログラミング言語(Python、Java)、データベース管理(SQL)、クラウド技術(AWS) |
プロジェクト管理 | PMBOK、アジャイル、スケジュール管理、リスク管理 | |
マーケティング | SEO、コンテンツマーケティング、SNS広告、マーケットリサーチ | |
財務管理 | 財務諸表分析、キャッシュフロー管理、資金調達、投資ポートフォリオ管理 | |
営業スキル | プレゼンテーションスキル、顧客関係管理(CRM)、営業戦術 | |
言語スキル | 英語のビジネス会話、中国語での契約交渉、スペイン語でのプレゼンテーション | |
ソフトスキル | コミュニケーション | 効果的なメールライティング、積極的なリスニングスキル、プレゼンテーションスキル |
リーダーシップ | チームビルディング、ビジョンの共有、動機付けの技術 | |
チームワーク | グループプロジェクトの調整、意見の調整、チーム内の役割分担 | |
問題解決能力 | 根本原因分析、ブレインストーミング、意思決定ツリーの使用 | |
意思決定能力 | データドリブンな意思決定、リスクベネフィット分析、シナリオプランニング | |
時間管理 | タイムブロッキング、優先順位付け、デッドライン管理 | |
クリティカルシンキング | 論理的思考、データ分析、仮説検証 | |
アダプタビリティ | 新しい技術の習得、環境の変化に対応する柔軟性、複数のタスクの管理 | |
エモーショナルインテリジェンス | 共感能力、感情の自己管理、他者の感情への対応 | |
ネゴシエーション | ウィンウィンの交渉戦略、コンフリクトマネジメント、妥協点の見つけ方 | |
創造性 | 新製品のアイデア出し、問題への革新的なアプローチ、デザイン思考 |
STEP2:キャリアプランを明確にする
次に、将来のキャリア目標を設定します。目標が明確になることで、必要なスキルや学習プランを具体的に計画することができます。
キャリアプランを立てる際には、短期的な目標と長期的な目標をバランスよく設定しましょう。
いきなり長期の計画を立てるよりも、まずは自分にできる無理のない短期目標を計画することが大切です。
階段を飛ばして登るようにキャリアアップできる人材はもちろんいますが、様々な運によって成功している確率が高いです。そのため、一段ずつ階段を登るように、短期のキャリアプランを積み重ねる意識をもちましょう。
STEP3:必要スキルを獲得する
設定した目標に向けて必要なスキルを習得しましょう。具体的なスキルアップ計画を立て、継続的に学習を進めることが重要です。
獲得したいスキルによって方法論はバラバラですが、専門書やオンラインコースを活用して知識を深めることや、実際の業務を通じてスキルを磨くことが効果的です。
戦略的スキルアップの考え方
スキルアップをする際には、より需要が高く、他の人と差別化したオリジナリティを発揮できる人材になることが重要です。スキルアップのおすすめの考え方について解説します。
属人性が高い
属人性の高いスキルは、その人自身の経験や知識に基づくもので、他の人が簡単には代替できません。できる人が限られているのであれば、他の人に依頼できませんので、職場でのあなたの価値が高まります。
属人性の高いスキルは、専門性やノウハウを持つことで得られるものであり、他者との差別化につながります。
AIに代替されない
AI技術の進化により、簡単に自動化できるスキルは価値が下がる可能性が高いです。クリエイティブな思考や対人スキルなど、AIに代替されにくいスキルを身につけることが重要です。
例えば、問題解決能力やリーダーシップなどは、人間ならではのスキルであり、今後も重要な価値を持ち続けるでしょう。
希少性が高い
市場で希少なスキルは、競争力を高めるために非常に有効です。
希少性の高いスキルを持つことで、職場での自分の価値が高まり、転職や昇進の際にも有利に働きます。
希少性の掛け算
元リクルート出身の藤原和博さんは「100万人に1人の人材になる」ためには、3つのスキルを掛け算すると良いと説いています。
スキルを身につける時に、熟練するには時間がかかり、困難な場面も多いです。たとえば、営業で「日本一」になるのは難しいです。ですが、「法人営業のスキルを持っている」程度であれば、1000人に1人程度のスキルでしょう。これは、「日本一」より難易度も低く時間さえかければ習得可能です。
この発想で、3つのスキルを獲得できれば、「1000人に1人のスキル」×「1000人に1人のスキル」×「1000人に1人のスキル」=「100万人に1人のスキル」を持った人材となることが可能です。
筆者の場合、「デジタルマーケティング」×「経営」×「事業開発」のスキルを獲得できるように戦略的に行動してきました。今では希少性の高い人材になることができたと実感しています。
キャリア面談や転職時に会話しやすい
キャリア面談や転職活動でアピールできるスキルを選ぶことも重要です。具体的な成果やプロジェクトに結びつくスキルは、面接官に強い印象を与えることができます。
自分のスキルセットを明確に把握し、それを具体的に説明できることが、成功するキャリア面談のポイントです。
例えば「マーケティングツールを活用できるようになった」「プログラミング言語を習得し新しいプログラムを構築した」のようなわかりやすいスキルアップは、評価がしやすいのです。
スキル取得の方法
最後に、スキルを習得する際に活用できる方法についてご紹介します。
資格取得
資格取得は、スキルを証明する最も効果的な方法の一つです。業界標準の資格を取得することで、専門知識や技術力を客観的に証明できます。
資格は、求人市場での競争力を高めるだけでなく、証明書が発行されますので自己肯定感の向上にもつながります。
資格取得は日本人向き?
資格は試験に合格することで獲得できます。日本人は小さい頃から受験の文化があり、「テスト勉強」をすることが当たり前です。そのため、資格取得勉強を得意とされる方も多いと考えられます。
教育機関の活用
大学や専門学校、オンラインコースなどの教育機関を活用して、新しいスキルを習得しましょう。定期的な講義や実習を通じて、体系的に学ぶことができます。
また、無料学習できるオンライン教材も山のようにありますのでコスト的なハードルが低いものも多いです。移動時間や就寝前など、隙間時間を使ってスキルアップができるのでおすすめです。
OJT
OJT(On-the-Job Training)は、実際の業務を通じてスキルを習得する方法です。実務経験を積むことで、理論と実践のギャップを埋めることができます。OJTは、職場での即戦力としてのスキルを身につけるための重要な手段です。
OJTは直接教わり、すぐに実行に移せるので、最も早いスキルアップの方法だと思います。ただし、その会社でしか活用できないスキルも存在しますので、キャリアアップや給料アップのために必要なスキルかどうかをきちんと見極めましょう。
書籍・インターネットの活用
おそらく現代は、人間が誕生してから最も情報に溢れた社会です。インターネットで検索すれば数多くの情報にアクセスできますし、毎日新しい本や雑誌が出版されています。
自己学習として書籍やインターネットの情報を活用する際は取捨選択が重要です。情報が多い分、誤った情報や、なんの根拠もないような情報も含まれている可能性があります。
どの情報が適切で、自分のスキルアップに活用できるか、見極める目を持ってください。
まとめ
戦略的にスキルアップする方法について解説してきました。スキルアップすることは様々なメリットがありますし、何より新しいことを知って身につけることは非常に楽しい行為です。
無理にスキルアップをするよりも、肩の力を抜きながら、楽しんで習得されることをおすすめしたいです。
事業開発.comは、事業を担う事業家の輝く未来を応援するためのメディアです。スキルアップしようと考える方にも役立つ記事が満載ですので、よろしければ他の記事もご覧ください。