近江商人の「三方よし」をビジネスに活用しよう|持続的な社会の実現へ

近江商人の「三方よし」をビジネスに活用しよう|持続的な社会の実現へ

「三方よし」という言葉をご存知でしょうか。

売り手、買い手、世間の関係者全員がメリットを感じることができるようビジネスで使用される言葉です。元々は江戸時代に、近江商人によって使われた言葉と言われています。

現代のグローバル化され、流動性高く、瞬く間に変化する自由市場においても、この江戸時代から使われている「三方よし」の哲学には大きな学びがあります。

今回は「三方よし」について解説していきます。

この記事を読むとわかること

・三方よしとは何かわかる

・現代の三方よしについてわかる

この記事を書いた人

古川賢人

古川賢人 事業開発.com編集長/株式会社イフビズ代表取締役
事業家、起業家。ベンチャー企業創業および事業開発〜運用、大企業での事業開発〜運用まで経験。世界的経済誌Forbesにてアジアで活躍する30歳未満のリーダー人材(Forbes 30 Under 30 Asia 2021)として選出された他、グッドデザイン賞、日本ギフト大賞、ACC等受賞経験あり。事業開発人材=事業家の働きやすい環境作りや事業家育成が企業成長及び経済成長の鍵と考えている。

目次

三方よしについて

まずはじめに、冒頭でも記載した三方よしの意味について確認していきましょう。

三方よしとは

三方よしとは、江戸時代の近江商人によって発展した経営理念で、「売り手よし、買い手よし、世間よし」という三つの要素を満たすビジネスの在り方を指します。

この理念は、売り手(企業)だけでなく、買い手(顧客)や世間(社会)全体にも利益をもたらすことを目的としています。関係者全員がメリット(=よし)を享受できる商売を指して利用されます。

売り手よし

売り手よしとは、企業が利益を上げることを指します。企業が持続的に成長し、利益を確保することで、従業員の雇用や福利厚生、企業の持続可能性が確保されます。

買い手よし

買い手よしは、顧客が満足することを意味します。高品質な商品やサービスを提供し、顧客のニーズを満たすことで、リピート購入や口コミによる新規顧客の獲得が期待できます。

世間よし

世間よしは、社会全体に貢献することを表します。企業活動が地域社会や環境に対しても良い影響を与えることで、企業のブランド価値が向上し、長期的な信頼関係が築かれます。

ルーツとなった近江商人

近江商人は、現在の滋賀県を中心に江戸時代に活動した商人たちで、彼らの経営哲学が「三方よし」の基盤となりました。近江商人は、商品取引だけでなく、地域社会との共存共栄を重視し、信頼と信用を築くことで商売を成功させました。

特に近江商人の中でも有名なのは「八幡商人」です。江戸に進出し、八幡の大店(おおだな)と呼ばれる大型店舗を経営しました。八幡の大店の運営を行ってきた伴庄右衛門家では、店の資産は私有財産ではないと説いていたといいます。

三方良しの事例

近江商人の「三方よし」は、現代の自由主義の株式市場においても多数の企業に影響を与えています。例えば、ある食品メーカーは、高品質な原材料を使用し、生産者と共に地域社会を支援する取り組みを行っています。また、あるIT企業は、社員の働きやすい環境づくりと共に、地域の教育支援活動を展開しています。

これらの企業は、売り手、買い手、世間のすべてに利益をもたらし、持続可能な成長を遂げています。具体的な企業の事例を見ていきましょう。

1. 花王株式会社

花王は、環境に配慮した製品づくりで知られています。例えば、プラスチック使用量を削減した容器や、環境にやさしい成分を使った洗剤の開発などを行っています。

消費者に安全で高品質な商品を提供し、企業としての持続可能な成長を実現しています。

2. トヨタ自動車株式会社

トヨタは、ハイブリッドカーや電気自動車の開発を通じて、環境負荷の低減に取り組んでいます。また、地域社会への貢献活動として、交通安全教育や自然環境保護活動などを行っています。

これにより、顧客満足度の向上と共に、社会全体に対する責任を果たしています。

3. パナソニック株式会社

パナソニックは、エネルギー効率の高い製品を提供することで、環境負荷の低減に努めています。さらに、地域社会との共生を図るため、地域の教育機関との連携や、災害支援活動を行っています。消費者と地域社会の双方に利益をもたらしています。

4. ユニ・チャーム株式会社

ユニ・チャームは、高齢者向けの介護用品やベビー用品の開発を通じて、顧客の生活の質を向上させています。また、持続可能な素材を使用した製品の開発や、生産過程での環境負荷低減にも注力しています。

これにより、消費者と地球環境の双方に配慮した事業展開を行っています。

5. ソフトバンクグループ株式会社

ソフトバンクは、教育支援プログラムや、自然災害時の支援活動など、さまざまな社会貢献活動を展開しています。また、革新的な技術を通じて、顧客に新しい価値を提供し続けています。

これにより、顧客満足度の向上と社会全体への貢献を実現しています。

紹介した企業は、日本を代表する大企業であると同時に、顧客との関係性だけではなく、社会的な貢献活動にも力を入れているのです。

三方よしを実践するための観点

三方よしを実現するために必要なことは、「自社の利益」「顧客の満足」「社会への貢献」です。株式会社であれば、経済活動を主体としていますので、「自社の利益」「顧客の満足」は達成することができるでしょう。難しいのは「社会への貢献」です。

「社会への貢献」をするためには、自社がどのような貢献ができるかを言語化する必要があります。どうしても優先度としては「自社の利益」「顧客の満足」となってしまいがちですが、ビズネススキームの中で社会とのどのような接点を構築できるか検討しましょう。

具体的な事例を紹介した企業はどれも、無理に社会貢献活動を行っているわけではありません。製品開発時の環境への配慮や、ビジネスを展開する地域への奉仕活動、顧客周辺の関係者への貢献など、その企業だからこそできる社会への還元を意識しています。まずは、自社だからこそできることを、無理のない範囲で実行してみましょう。

三方よしの社会的意義

最後に三方よしの社会的意義について解説します。「世間よし」を考慮する際の観点となります。

CSR

CSR(企業の社会的責任)とは、企業が社会に対して果たすべき責任のことを指します。三方よしの理念は、CSR活動の基本となり、企業が社会貢献を通じて信頼を得るための重要な指針となります。

具体的には、地域社会の発展に寄与するプロジェクトや環境保護活動などが挙げられます。企業の社会的評価が向上し、結果的にブランド力が強化されます。

SDGs

SDGs
SDGs

SDGs(持続可能な開発目標)は、国連が提唱する17の目標です。貧困の撲滅や環境保護など多岐にわたります。三方よしの理念は、SDGsの達成にも貢献できるビジネスモデルであり、企業が持続可能な未来を築くための具体的なアクションのヒントとなります。

例えば、再生可能エネルギーの利用や、労働環境の改善、教育への投資などが該当します。

グローバル展開をする上では大切な目標になりますので、SDGsのどれに貢献できるか検討しましょう。

番号SDGs項目説明
1貧困をなくそうあらゆる場所であらゆる形態の貧困を終わらせる
2飢餓をゼロに飢餓を終わらせ、食料安全保障と栄養改善を達成し、持続可能な農業を促進する
3すべての人に健康と福祉をあらゆる年齢の全ての人々に健康的な生活を確保し、福祉を促進する
4質の高い教育をみんなに全ての人に包摂的かつ公平で質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する
5ジェンダー平等を実現しようジェンダー平等を達成し、全ての女性と女児の能力強化を図る
6安全な水とトイレを世界中に全ての人に水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保する
7エネルギーをみんなにそしてクリーンに全ての人に手頃で信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保する
8働きがいも経済成長も全ての人のための持続可能な経済成長と生産的な雇用、そして働きがいのある仕事を促進する
9産業と技術革新の基盤をつくろう包摂的かつ持続可能な産業化を促進し、イノベーションの基盤を構築する
10人や国の不平等をなくそう国内および国家間の不平等を是正する
11住み続けられるまちづくりを包摂的、安全、レジリエントかつ持続可能な都市と人間居住を実現する
12つくる責任つかう責任持続可能な消費と生産のパターンを確保する
13気候変動に具体的な対策を気候変動とその影響に立ち向かうための緊急対策を取る
14海の豊かさを守ろう持続可能な開発のために海洋と海洋資源を保全し、持続可能な形で利用する
15陸の豊かさも守ろう陸域生態系の保護、回復、持続可能な利用を促進し、持続可能な森林の管理、砂漠化への対処、土地の劣化を阻止し、生物多様性の損失を止める
16平和と公正をすべての人に持続可能な開発のために平和で包摂的な社会を促進し、全ての人に司法へのアクセスを提供し、あらゆるレベルで効果的かつ責任ある包摂的な制度を構築する
17パートナーシップで目標を達成しよう持続可能な開発のための実施手段を強化し、グローバル・パートナーシップを活性化する

まとめ

三方よしについて解説してきました。売り手よし、買い手よし、世間よしの三つの要素をバランスよく取り入れることで、企業は持続可能な成長を遂げることができます。

これからの企業経営において、三方よしの理念を取り入れることは、成功への近道となるでしょう。ぜひ三方よしをビジネスに取り入れてみてくださいね。

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事業家、起業家。ベンチャー企業創業および新規事業開発〜運用、大企業での新規事業開発〜運用まで経験。世界的経済誌Forbesにてアジアで活躍する30歳未満のリーダー人材(Forbes 30 Under 30 Asia 2021)として選出された他、グッドデザイン賞、日本ギフト大賞、ACC等受賞経験あり。事業開発人材=事業家の働きやすい環境作りや事業家育成が企業成長及び経済成長の鍵と考えている。

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