【新規事業企画書の作成ガイド】成功のための完全対策マニュアル

【新規事業企画書の作成ガイド】成功のための完全対策マニュアル

新規事業を立ち上げる際には、その内容をわかりやすく伝えるための「新規事業企画書」が必要になります。

新規事業企画書の目的は、周囲に説明したり、事業承認を得ることです。ですが、本来的には、事業を成功させるための要諦をまとめることにあります。

何度も新規事業企画書を作成してきた筆者が、必要な項目を作成ガイドとしてまとめました。ぜひ、本記事を参考に新規事業企画書の作り方をマスターしてくださいね。

この記事を読むとわかること

・新規事業企画書の作り方がわかる

・新規事業企画書で何を記載すればいいのかわかる

・新規事業企画書作成時のポイントがわかる

この記事を書いた人

古川賢人

古川賢人 事業開発.com編集長/株式会社イフビズ代表取締役
事業家、起業家。ベンチャー企業創業および事業開発〜運用、大企業での事業開発〜運用まで経験。世界的経済誌Forbesにてアジアで活躍する30歳未満のリーダー人材(Forbes 30 Under 30 Asia 2021)として選出された他、グッドデザイン賞、日本ギフト大賞、ACC等受賞経験あり。事業開発人材=事業家の働きやすい環境作りや事業家育成が企業成長及び経済成長の鍵と考えている。

目次

新規事業企画書作成の目的

新規事業企画書作成の目的
新規事業企画書作成の目的

新規事業企画書は、企業が新しいビジネスを立ち上げる際に、その計画や戦略を詳細に記述する資料です。この資料は、プロジェクトの成功に不可欠な要素を明確にし、関係者全員が共通の認識を持つために必要です。そして、事業を成功させるための要諦をまとめる目的もあります。

また、その他に以下の目的もありますので、詳しくみていきましょう。

方向性の明確化 

事業の目標やビジョンを明確にすることで、チーム全体が同じ方向を向いて行動できるようになります。

例えば、新規事業のミッションやビジョンを明確にし、それに基づいた戦略を策定することで、プロジェクトの一貫性が保たれます。

計画の具体化

必要なリソース、タイムライン、リスクなどを具体的に計画し、プロジェクトの実行可能性を高めます。

例えば、必要な資源や人材、予算の見積もりを具体的に示すことで、計画の実現可能性を高めることができるのです。

関係者の説得

投資家や経営陣に対して、新規事業の価値と成功の可能性を効果的に伝えるための資料として機能します。

具体的なデータや事例を用いて、説得力を持たせることが重要です。資料の出来が、事業承認可否に直結するものとご理解ください。

新規事業企画書の記載項目

新規事業企画書の記載項目
新規事業企画書の記載項目

具体的に新規事業企画書の記載項目についてみていきましょう。

企画書の背景

まず、事業を始める動機や背景について説明します。市場のニーズや課題、企業の成長戦略における新規事業の位置づけを明確にします。

背景は導入部ですので、詳細は「市場状況と戦略」などで補足すると良いでしょう。

企画書の背景を記載する際の参考となる構成要素は以下の通りです。全てを網羅する必要はないですが、記載した要素をベースにして、説明する相手を引き込むような導入を意識してください。

要素詳細説明
市場の現状分析市場規模、成長率、市場トレンド
業界動向業界の現状、主要プレーヤー、技術革新
顧客ニーズターゲット顧客の特定、顧客の課題
競合分析主要競合他社、競争優位性
自社の現状現行事業の状況、社内リソース
新規事業の必要性事業機会の特定、現状の課題と解決策
リスク分析潜在的リスク、リスク対策
経済環境マクロ経済状況、規制や法規制
成功事例他社の成功事例、成功要因の分析

事業概要/事業コンセプト

新規事業の概要やコンセプトを簡潔に説明します。ここでは、事業の基本的なアイデアや提供する製品・サービスについて記述します。例えば、新しい製品やサービスの特徴や、それがどのように市場に価値を提供するのかを明確にします。

要素詳細説明
事業名事業の名称を明示
事業の目的事業を立ち上げる目的や背景を説明
事業のミッション事業が目指すべき使命やビジョンを記載
事業のターゲット市場狙う市場や顧客層を特定し、その特性を説明
提供する製品・サービス提供する製品やサービスの具体的な内容を説明

提供価値

新規事業が提供する価値について具体的に説明します。顧客にどのような利益をもたらすのか、競合他社との差別化ポイントは何かを明確にします。例えば、コスト削減、利便性の向上、独自の機能など、顧客にとってのメリットを具体的に示してください。

可能であれば提供価値は自社の強みも含む形で記載してください。自社の強みを発揮することで提供価値が生まれるといった言い方ができるとベストです。

ビジネスモデル

収益をどのように得るのか、コスト構造はどうなっているのか、パートナーシップやリソースの利用方法について詳述します。例えば、サブスクリプションモデル、フリーミアムモデル、広告収入モデルなど、具体的な収益モデルを示してください。

市場状況と戦略

ターゲット市場の現状、競合分析、参入戦略について説明します。

市場調査データやSWOT分析を活用して、戦略の裏付けを行います。例えば、競合他社の強みと弱みを分析し、自社の強みを活かして市場でのポジショニングを図ります。

こちらは調査結果から得られる知見をもとにして作成されます。調査内容が膨大になったとしても、なるべくシャープに、わかりやすくまとめるようにしてください。良い企画書は、わかりやすく簡潔なものです。

調査や戦略設計のフレームワークについては以下をご参照ください。

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予算目標(短期、中長期)

初期投資や運転資金の見積もり、収益予測について短期と中長期の視点から記述します。

具体的な数値を示し、経済的な計画を明確にします。例えば、初年度の売上目標や3年間の成長見込みを具体的な数字で示します。

詳細な数値はExcel形式の資料で損益計算書(P/L)形式でまとめれば良いでしょう。スライド形式でまとめる際は、重要な項目のうち、どのくらいの予算達成がいつ頃に可能なのかを説明できるように工夫してください。

予算を考慮する際に必要な項目を参考までに記載しますので、ご参照くださいませ。

項目詳細説明
初期投資費用設備投資、ITインフラ、オフィススペース
人件費従業員給与、採用費用、福利厚生費用
運営費用賃貸料、光熱費、通信費、消耗品費
マーケティング費用広告費用、プロモーション費用、市場調査費用
製品・サービス開発費用研究開発費、試作費用
物流・配送費用配送費用、倉庫費用
法務・規制費用法律顧問費用、特許・商標登録費用
資金調達費用借入費用、資金調達関連費用
予備費用予備費

実行体制/体制図

プロジェクトを遂行するためのチーム編成や役割分担を体制図形式で記載します。また、アライアンス先や外部パートナーがいる場合は、その関係性についても説明します。

プロジェクトマネージャー、マーケティング担当、技術担当など、具体的な役割とその責任を明確にしてください。

スケジュール

プロジェクトの主要なマイルストーンとその達成スケジュールを示します。各フェーズの開始と完了予定日を記載し、進行管理の基準を設定します。例えば、製品開発のフェーズ、マーケティングキャンペーンの開始日、ローンチ日の目標などを具体的に示します。

開発や制作が伴うような新規事業の場合、スケジュールが想定通りにいかないことはよくあります。部内などで計画書を活用する際は暫定版としての記載をおすすめします。

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特記事項/リスク

新規事業における潜在的なリスクや課題について説明し、それらに対する対応策を示します。例えば、市場の変動リスク、技術的な課題、競合の動向など、潜在的なリスクとその対策を具体的に記述します。

項目詳細説明
市場環境市場の変動要因や競争状況についての詳細。
法規制業界特有の法規制や規制変更の可能性。
技術要件技術開発の進捗状況や技術革新の動向。
パートナーシップ重要な提携先やその役割、提携リスク。
財務状況資金調達の状況やキャッシュフローの見通し。
運営体制プロジェクトチームの構成や運営計画。
顧客対応カスタマーサポートの計画やフィードバック収集の仕組み。
市場リスク市場変動や顧客需要の不確実性。
競争リスク競合他社の動向や価格競争の激化。
技術リスク技術的課題や新技術の登場による競争劣位。
財務リスク資金不足やコスト超過のリスク。
法規制リスク法的規制やコンプライアンスリスク。
運営リスクプロジェクト遅延や人材リスク。
パートナーリスク提携先の問題や契約リスク。
環境リスク自然災害や環境規制の強化。

新規事業の失敗理由については以下を参考にしてください。

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その他/付録資料

その他、内容によっては以下の資料も検討してください。

既存事業とのシナジー

新規事業が既存の事業とどのようにシナジーを生むのかを説明します。相互補完のメリットやリソースの共有について具体的に述べます。例えば、既存の顧客基盤を活用したクロスセルやアップセルの戦略を示します。

特に企業のアセットを十分活用できる場合は、きちんと説明するようにしましょう。説明を受ける側としても、「今あるアセットを有効活用できる」と言われれば、大きなメリットに感じやすいです。

調査データ

市場調査や顧客インタビューのデータを付録として提供し、事業の裏付けを強化します。例えば、消費者調査の結果や市場規模の予測データなど、信頼性の高いデータを提示してください。

撤退ライン

事業の成功が見込めない場合の撤退基準や条件を明確にし、リスク管理の一環として記載します。例えば、一定期間内に目標売上を達成できなかった場合の撤退基準を具体的に示します。

新規事業企画書作りのポイント

新規事業企画書を通過させるコツ
新規事業企画書を通過させるコツ

新規事業の章立てについては概ね理解できたでしょうか。次に、資料作りのポイントについてご説明いたします。

調査をしっかりと行う

市場調査や競合分析を徹底的に行い、データに基づいた計画を立てることが重要です。事前のリサーチが新規事業の成功を左右します。例えば、ターゲット市場のニーズを把握し、競合他社の強みと弱みを分析することで、より効果的な戦略を策定します。

調査はし過ぎることはないので、不要かと思われるような調査であっても、多くの情報を集めるように心がけてください。

数値データを用いて、蓋然性について検討する

計画の信頼性を高めるために、数値データを活用してビジネスの蓋然性を検討します。収益予測や市場規模のデータは説得力を持たせます。例えば、市場規模の成長予測や売上シミュレーションを具体的な数値で示します。

勝てる戦略を構築する

競合に対して優位性を持つ戦略を構築します。独自の強みを活かし、顧客にとっての魅力を最大限に引き出すことがポイントです。例えば、差別化された製品やサービス、独自のマーケティング戦略を策定してみましょう。

経営資源活用を考慮する(強みを活用する)

自社の強みやリソースを最大限に活用し、効率的で負けない事業運営を目指します。

内部リソースの適切な配分が成功の鍵となります。例えば、既存の技術や人材を活用し、コスト効率を高める戦略を示してみましょう。

新規事業企画書のチェック体制

新規事業企画書のチェック体制
新規事業企画書のチェック体制

新規事業企画書は、様々な関係者にチェックしてもらいましょう。多くのフィードバックを得ることで、自分だけでは気が付かなかった観点に気づく可能性があります。フィードバック数は質に直結するのです。

関係者ごとのチェックポイントについて紹介いたします。

部内メンバー

企画書作成初期段階では、プロジェクトチームのメンバーによるチェックを行います。多様な視点からのフィードバックを受け、内容をブラッシュアップします。例えば、マーケティング担当や技術担当からの意見を取り入れることで、より実現性の高い計画を作成します。

特に実行や実務周りの最適化をはかるために重要です。

部長〜事業部長

次に、部門の責任者や事業部長によるレビューを行い、計画の実現可能性や整合性を確認します。例えば、事業部長が予算の妥当性や市場戦略の適合性を評価します。

ROIや戦略の妥当性についてレビューをもらってください。

執行役員以上の決裁者

最終的には、執行役員や経営陣による承認を得ます。事業の方向性や資金調達計画についての最終判断を仰ぎます。例えば、CFOが財務的な健全性を確認し、CEOが戦略的な適合性を判断します。

決済者の承認を獲得することができれば、新規事業の立ち上げを具体的に進行できることでしょう。

新規事業企画書を通過させるコツ

新規事業企画書を通過させるコツ
新規事業企画書を通過させるコツ

最後に、新規事業企画書で承認を得るために覚えておきたいコツについて紹介します。

関係者とのコミュニケーションを密にする

関係者とのコミュニケーションを密にし、協力体制を築くことが重要です。

プロジェクトの成功にはチーム全体の協力が欠かせません。例えば、定期的なミーティングや情報共有を通じて、関係者全員が同じ認識を持つことを確保します。

特に部内メンバー、同じ事業部、管掌役員など、近しい間柄の関係者とは認識齟齬の発生しないようにしっかりと会話しましょう。

熱量や情熱を伝える

企画書にはプロジェクトへの情熱や熱意を反映させます。情熱が伝わることで、関係者の支持を得やすくなります。例えば、ビジョンやミッションを明確にし、それに対する熱意を具体的な言葉で表現します。

企画書の出来も重要ですが「企画担当者自身に任せて大丈夫か」といった観点があることを忘れてはいけません。

「どうしてもやりたい」という気持ちを自信に変えて、堂々と関係者に説明してください。事業を作るのは人ですので、人への信頼も重要なのです。

まとめ

新規事業企画書の内容やポイントについて解説してきました。

説明した内容をもとに資料作成をすすめていっていただきたいですが、一人で抱え込まず、ぜひ多くの関係者を巻き込みながら進めていってください。巻き込む中で信頼関係を築くことができますし、多くのフィードバックを受け取ることで資料の質が上がります。

ぜひ素晴らしい新規事業企画書を作成し、事業を立ち上げてくださいね。

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この記事を書いた人

古川 賢人のアバター 古川 賢人 事業開発.com編集長/株式会社イフビズ代表

事業家、起業家。ベンチャー企業創業および新規事業開発〜運用、大企業での新規事業開発〜運用まで経験。世界的経済誌Forbesにてアジアで活躍する30歳未満のリーダー人材(Forbes 30 Under 30 Asia 2021)として選出された他、グッドデザイン賞、日本ギフト大賞、ACC等受賞経験あり。事業開発人材=事業家の働きやすい環境作りや事業家育成が企業成長及び経済成長の鍵と考えている。

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