「新規事業を立ち上げたけれど、全然売り上げが上がらない…」
「新規事業だから予算もないし、人もいない。どうやって売ればいいのか…」
新規事業を立ち上げた後にこんな悩みをお持ちではないでしょうか。
新規事業を意気揚々とローンチした後、必ずと言っていいほど訪れるのが「売上の壁」。想定していたようにお客さんが買っていってくれない状況に、絶望感を抱いてしまう事象開発担当者も多いことでしょう。
新規事業の成功は「センミツ(1000に3つ)」と言われる厳しい世界。失敗することは決して恥ずかしいことではないのです。ですが、せっかく人も金も投下した事業を作ったのならば、成功したいと考えるのが人の性。成功に少しでも近づける方法があれば知りたい方も多いでしょう。
筆者自身、ローンチ後の「売上の壁」をなんども味わってきました。期待値以下の市場の反応というものは正直辛い経験ですが、この壁で諦めてしまう人が多いからこそ、チャンスでもあると実感しています。戦い方を知れば、チャンスはあります。鍵はマーケティングです。
新規事業の売上を爆増させ、失敗を成功に変えるマーケティングについて解説していきます。
この記事を読むとわかること
・マーケティングで何を考えればいいのかわかる
・新規事業のマーケティングで具体的に何をすればいいのかわかる
この記事を書いた人
古川賢人 事業開発.com編集長/株式会社イフビズ代表取締役
事業家、起業家。ベンチャー企業創業および事業開発〜運用、大企業での事業開発〜運用まで経験。世界的経済誌Forbesにてアジアで活躍する30歳未満のリーダー人材(Forbes 30 Under 30 Asia 2021)として選出された他、グッドデザイン賞、日本ギフト大賞、ACC等受賞経験あり。事業開発人材=事業家の働きやすい環境作りや事業家育成が企業成長及び経済成長の鍵と考えている。
マーケティングとは
マーケティングという言葉は世に溢れかえっています。マーケティングとは、詳細かつ学術的な説明をするならば「顧客のニーズを探すための市場調査・分析および、それに基づく企画・開発・広告宣伝・広報活動等によって売上を作るための仕組み作り」を指した言葉です。
ですが、この一般的な説明では少しわかりにくいと思いますので、もっと簡単に考えましょう。マーケティングとは「お客様が何を求めているかを考えて、その解決策を実行すること」です。
商売においてお金を生み出してくれるのは「お客様」です。お客様が需要を持っているからこそ、その解決策を供給することで、お金が動くのです。
お客様が「(Who)誰なのか」「(Why)なぜ欲しいのか」「(When/Where)いつどこで知ってくれるのか」「(How)どうしたら買ってくれるのか」「(How much)いくらなら財布の紐を緩めるのか」のように、お客様がお金を出すまでに必要な要素を分解して、一つ一つ紐解いていくことがマーケティングの意味することなのです。
新規事業におけるマーケティング戦略
すでに大ヒットしている商品やサービスであれば、お客様像の解像度が高いことでしょう。お客様像がはっきりしていれば、そのお客様が反応するような宣伝をして、お客様が買いたいようなビジュアルを作って、お客様が手に取った時に嬉しくなるような商品設計をすれば、もっと売れるのです。
では新規事業はどうでしょうか。新規事業は、当たり前ですが、立ち上げたばかりのサービスですので、お客様像がぼんやりしているはずです。お客様が「(Who)誰なのか」「(Why)なぜ欲しいのか」「(When/Where)いつどこで知ってくれるのか」「(How)どうしたら買ってくれるのか」「(How much)いくらなら財布の紐を緩めるのか」わかっていない状態だから売れないのです。
マーケティングとは「お客様が何を求めているかを考えて、その解決策を実行すること」と説明しました。新規事業においてのマーケティング活動は、解像度の低い顧客像を少しずつ答えを見つけていきながら、解像度を高くする作業そのものなのです。
既存事業がジグソーパズルのうち80%が完成しているものだとしたら、新規事業はジグソーパズルが全く完成していない状態に等しいのです。ひとつずつピースをはめていき、顧客像を掴むことで「売上の壁」を超えていきましょう。
では、具体的に新規マーケティング戦略で何をしていくかみていきましょう。
トライ&エラーという前提
「答えは簡単に見つからない」
新規事業のマーケティングでは、まさにこの言葉通りの結果が待ち受けています。困難な道が待ち受けていることを覚悟してください。
簡単に答えがすぐに見つかるケースもありますが、それは稀なケースです。時間がかかるものと考えて、答えが早く見つかっても「ラッキーだった」と思うようにしてください。
トライ&エラーを繰り返した結果「お客様が何を求めているかを考えて、その解決策を実行すること」ができるのです。
ステップ1:情報収集
新規事業のマーケティングは、まずは情報収集からはじめます。
「(Who)誰なのか」「(Why)なぜ欲しいのか」「(When/Where)いつどこで知ってくれるのか」「(How)どうしたら買ってくれるのか」「(How much)いくらなら財布の紐を緩めるのか」をひとつずつ仮説立てていきましょう。
そのためには、情報収集と整理が必要です。具体的な方法論を以下に記します。
情報収集の方法
・アンケートの収集・調査
統計情報として取得されているデータ、企業が独自に調査したデータを収集しましょう。調査データが存在しない場合、自社で調査することも検討しましょう。
・インタビュー
対象となりそうなお客様像に合わせたユーザーや企業に対してインタビューを行いましょう。生の声を聞くことで、何が重要なのかに気づくことが可能です。
・購買顧客の分析
実際に購入されている顧客がいる場合、その購買理由を分析してみましょう。需要と供給が成立しているので、その言語化作業と捉えてください。
ステップ2:戦略と戦術の整理
ステップ1でまとめた内容をもとに、戦略案と戦術案を作成していきます。
戦略とは「目標を達成するためのシナリオ」です。戦術とは「戦略を実行するための施策」です。平易な言葉に置き換えると「商品やサービスを売るための方法を決めて、実際にどんな施策を実行するか」を決めることです。
戦略案の整理
①「(Who)誰なのか」
どんな人が買っているのか属性を言語化しましょう。もっとも言語化するのは「課題が何か」です。その上で、補足情報として性別や年齢などの属性データも見える化しましょう。
②「(Why)なぜ欲しいのか」
どうして欲しくなるのか言語化しましょう。欲しい=感情の動きとなりますので、購買活動のどのポイントでどんな感情を持つのかを言語化しましょう。
③「(When/Where)いつどこで知ってくれるのか」
すでに購買されている場合、どんなタイミング、どんな場所だったか言語化しましょう。まだ購買されていない場合、仮説ベースで言語化しましょう。
④「(How)どうしたら買ってくれるのか」
整理した情報をもとに、どうしたら顧客が購買してくれるか考えましょう。「欲しい」と「買う」の間には大きな断絶があります。「欲しい」状態を「買う」という行動に移すためにできることは何かを考えましょう。
⑤「(How much)いくらなら財布の紐を緩めるのか」
最後に、お客様が、その商品やサービスにいくらならお金を出すのか、言語化しましょう。競合がいる場合は、市場に合わせた金額感があります。市場が形成されていない場合、その価値にどれだけのお金なら妥当か検討してください。
戦術案(施策案)の整理
・表の作成
表形式でまとめていきましょう。戦略案でまとめたないようから考えられる戦術を全て書き出す1つの表を作りましょう。複数の表を作成してしまうと情報が分散してしまうので、1つにすることを推奨しています。
・戦術案の記載
箇条書きで一覧化します。タイトルと簡単な詳細を記載しましょう。
・効率的な手段やツール
戦術を実行する際にどんな方法が効率的かを記載します。人手がかかるかかからないかは、チーム人数が少ないであろう新規事業にとって重要な基準です。
・優先度付与
最後に優先度付与を行います。優先度は「重要度」「即効性」「緊急性」「期待値」「費用」などの基準値を活用してください。総合的に評価が高いものから順に実行していきます。
ステップ3:マーケティング施策の実行
戦術整理まで完了したら、実行のステップです。粛々と施策を実行していってください。
どれだけ良い戦略や戦術が立案できても、結果が良くなければ自己満足となってしまいます。期待値や感情は捨てて、ひとつずつ実行していきます。
重要なことは、施策の評価を行うためにデータを取得することです。
デジタル施策であれば、どのようなデータを取得するべきか言語化して、戦術実行タイミングではデータ取得ができる状態にしてください。
アナログ施策であれば、どのようなポイントをチェックするか言語化してください。全てがデータ化できるわけではないですが、客観的に判断できるようにしましょう。
ステップ4:成功点と失敗点の振り返り/評価
施策が実行できたら振り返りと評価をしましょう。どんな施策も完璧な100点ということはないですし、まったくの0点ということもないです。言いたいことは、「成功点と失敗点のどちらも存在している」ということです。
成功と失敗を振り返り施策自体の評価を行い、改善できる点を考察してください。この作業を繰り返すことで、施策自体の解像度はどんどん上がりますので、根気強く、改善していく気概をもちましょう。
振り返りのポイント:成功した点・失敗した点→改善点→アップデートした施策案を立案する
マーケティング実行時に陥りがちなこと
さて、新規事業のマーケティング施策について説明してきましたが、特に実行時に陥りがちな状況について解説していきます。
市場の反応がない
「お客様の反応があるはずだ!」と意気込んで、空振りしているパターンです。
新規事業の中でも、まだ市場が形成されていない領域において発生しやすいパターンです。新規事業の立ち上げ自体が、まだ時代にあっていなかったと判断されます。
市場が形成されているのに同様の事象が発生している場合は、施策内容を変えてみましょう。最も効果を発揮しやすいのは、成果を出している競合が実行している施策を真似することです。真似をすることで情報収集し、顧客解像度をあげることをゴールにしてください。
購買が発生しない
市場の反応自体はあるのにも関わらず、誰も買ってくれない状況です。
いくつかのパターンがありますので、解説します。
・購買のための母数が獲得できていない
そもそも市場の反応自体が小さすぎて、購買まで達していないケースです。市場からの反応をより多く獲得できるように、母数稼ぎに焦点を当ててください。
・購買対象が比較検討段階で負けている
購買の土台には乗っていますが、競合に負けているケースです。何が負けているのか言語化して改善しましょう。
・購買フローが面倒/わかりにくい
意外と見落としがちですが、購買までのフローが面倒だったりわかりにくいケースです。お客様は、購買体験という「こと」を通じて「もの」を買います。「こと」の部分が煩雑になっていると、本当に魅力的でそこで購買できないという限定的価値がない限り、お客様は離れていってしまいます。
最も大切なのは、お客様の解像度をあげること
本記事内でも何度か記載していますが、最も大切なことは「お客様の解像度」をあげることです。マーケティングの真髄はこれに尽きます。
新規事業において、お客様の解像度さえあげることができれば、どんなことをやればいいのかは自然と見えてきます。「需要と供給」の需要をきちんと見える化することを、考え続けてください。
お客様はこわいものではないので、お客様のクレームはアイデアの宝庫だと思ってください。クレームは「課題を報告し改善して欲しい」と要望する行為です。わざわざ、運営元まで時間を使って連絡してくれている熱量の高い方です。しっかりと対応することでファンにもできますし、お客様像をはっきりさせるために真摯に対応しましょう。
まとめ
新規事業のマーケティングについては理解できたでしょうか。
本記事では「お客様が何を求めているかを考えて、その解決策を実行すること」を通して「お客様の解像度」をあげることについて解説してきました。
新規事業はまだまだ未成熟で、予算や人の課題でできることも限られていることが多いです。それでも、知恵を絞って、ぼんやりしていたお客様像がはっきりとしてくると、脳内快楽物質がドバドバと出るような気持ちの良い経験に繋がります。
筆者は、事業ないし仕事は本来楽しいものだと考えています。せっかく時間をかけて、手をかけて、事業を作っていくのであれば、その時間を楽しむことが大切です。新規事業のマーケティングにおいても、頭を固くしすぎず柔軟に、楽しみながらお客様像をはっきりとさせてください。
そして、新規事業の「センミツ(1000に3つ)」を乗り越えて、成功事業を作ってくださいね。
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